内容紹介
ドイツ占領下のフランス。主人公のジュリアンは強制労働から逃げ出し、故郷に潜伏する。
『赤いベレー帽の女』でパリのレジスタンス運動を描いたジブラが贈る戦時下のもうひとつの物語。
1943年初夏、ドイツ占領下のフランス南部の村カンベラック。
村の青年ジュリアン・サルラはドイツへの強制労働行きを逃れてこっそり戻ってくるが、彼の乗っていた列車が彼の脱走直後に爆撃されてしまう。
彼の身分証明書が別の青年の遺体の上で発見されたため、ジュリアンは死亡したことになる。
以来彼は広場に隣接する空き家の屋根裏に身を潜め、鎧戸の隙間から村人の営みを覗き見るようになる。
親独派民兵のセルジュ、同じく親独派のエドゥアール・ブイスー、反独派のバジル、カフェの店主フェルナン、神父、そして恋人セシル…。
著者紹介
作・画
ジャン=ピエール・ジブラJean-Pierre GIBRAT
1954年パリ生まれ。 若いころからイラストレーターとして活躍するが、すぐにバンド・デシネを描き始める。
シナリオ・ライターのジャッキー・ベロワイエとの出会いはバンド・デシネ界の新しいヒーロー、Goudardグダールを誕生させる。ごく普通の少年の日常を 描いたシリーズは掲載誌を変えながら多くのファンをつかむ。
1982年、転機が訪れる。ジブラの描く女性の美しさに魅せられたベロワイエがパリジェンヌのキャラクターをグダール・シリーズに導入することを思いつく。
一方、ジブラはジャンルやテーマにこだわらず、予期せぬような作品も描く。1995年に発表したPinocchia「ピノキア」(シナリオ:フランシス・ルロワ)は 「ピノキオ」のパロディだが、かなりエロティックな作品だ。また翌年発表した Marée basse「引き潮」(シナリオ : ダニエル・ペックール)は幻想的な作品 である。
1997年に発表したLe Sursis「執行猶予」で新たな転機を迎える。ドイツ占領下のフランスの田舎町を舞台にしたこの作品は多くの支持を得、多くの賞に輝いた。この作品の続編とも言えるのが今回掲載のLe Vol du corbeau 「赤いベレー帽の女」である。「執行猶予」以来、シナリオも手がけ、ジブラはストーリー・テラーとしての才能も発揮している。「赤いベレー帽の女」第2巻は2006年アングレーム国際バンド・デシネ・フェスティヴァルにて優秀作画賞に輝いた。
彼の最新作は20世紀の戦争を生き抜青年Mattéo「マテオ」だ。